よむきくたべるあるくみる

現在「そだてる」モードにつき、どれも中途半端。

ベストセラーを読んでみた

図書館で借りて、今更ながら大ベストセラー「世界の中心で、愛をさけぶ」を読んだ。評判を聞いても興味が持てなかったけれど、読まずに批判するのも何だしそのうち読んでみようと思っていたので。
とりあえず、私の好みではなかったです。泣けるって煽りだけど私は泣けなかった。ていうかこれ別にお涙頂戴な話じゃないし、泣けるような話じゃないのでは。なんでこんなに売れたのかすごく謎。
以下、読んでいない人には不親切な感想&ツッコミ。ネタバレバリバリです。

  • 純愛小説、とも言われてたけど、そんな感じもあんまりしなかった。だって朔は普通にやりたがってるし(たまたまやれなかっただけ、って感じがした)。病気のアキに献身的な看病をする朔、というイメージを勝手に持ってたけどそんな場面ないし。なんていうか、あの輝いた僕と君との愛の日々、みたいなキラキラしたシーンがないんだよねえ。きゅんきゅんできない。
  • じゃあ生とか死とか喪失感って観点で読めるかというと、それも無理。そういう抽象的な話にしては薄っぺらすぎる。朔のじいちゃんのエピソードで深みを出そうとしてるのかもしれないけど、あれは逆効果じゃないのかなあ。しかも最後はじいちゃん死んでるのに、あの骨をどうしたのかは全然書かれてないし。あと、朔の淡々とした語りは喪失感を表してるんだろうけど、淡々としすぎててアキをどれほど好きだったのかが伝わってこない。
  • 登場人物にもあまり魅力がない。主人公、朔は自意識過剰で理屈っぽい少年で、もし身近にいたらあんまり関わりたくないような子だし、恋人アキはあまりに優等生で、ある意味男の理想の少女、現実には絶対いないタイプ。この2人が学級委員に選ばれた理由が全然分からない(なり手がなくて押し付けられたのなら分かるけど)。友人の大木は一番まともな登場人物だけど、なんか影が薄い。あのキャラクターならもっとうまく使えば随分話が面白くなると思うんだけど、キャラクターをうまく使いこなせてない感じ。
  • 文章そのものは非常に読みやすい。地の文に癖がなく、難しい言葉もあまり使わないのですらすら読める。普段本を読まない人でも読める、てのはこれのせいかも。私もつまんねーなー、と思いながらも放り出さずに読めた。ただ、会話文は嫌だった。読みやすいけどリアリティーがなくて。この時代にこんな喋り方するやついねえよ、と思いつつ読んでた。個人の好みだけど。
  • しかしいろいろ細かい点でツッコミ入れたくなる話だった。
  • 一番引っかかったのは、この話の時代設定。中学生の朔とアキが、2000年は10年後でその頃私たちは25歳、という会話をするシーンがあるのだけれど、それって舞台は1990年、主人公たちは私と同い年ってこと? でも、そうとは思えないくらい古臭い。CDとかペットボトルとか修学旅行が海外とか、90年代的な小物も登場するけれど、全体的に70年代から80年代前半な感じがする。奥付の著者紹介欄を見ると著者は私より16歳も上なのだけど、その年代の人が高校生だった頃なら違和感ない感じ。どうせならその頃を舞台にしてくれればそれはそれで楽しめたのに。ついでに会話文が方言なら尚良し。ぐっとリアリティーが増すと思う。それとも田舎では1990年頃もあんな感じだったのか?
  • 図書館で日当を稼ぐって何? 家が市立図書館の敷地内にあって母親が図書館に勤めているからって、中学生が図書館の手伝いをして日当を貰うなんてことは不可能。親の仕事の手伝いをして金を貰うって、自営業じゃないんだよ? 図書館は市の施設だよ? 中学生にアルバイトさせる訳がない。単に手伝ったご褒美として母親から小遣いを貰ってるのかとも思ったけど、そうでもなさそうだし。高校生になってもやってるけど、高校生だって市のアルバイトなんかできないはず。だいたい話の展開上、主人公のアルバイト先が図書館である必要なんか全然ないのだから、普通にどこかの店でアルバイトして稼げばいいのに。
  • アキは冒頭、ロックを聞くと頭の中がぐちゃぐちゃになるの、とか言ってるくせに、無人島に行った時には朔がつけたラジオからレッチリとか流れてきても何も言いません。なんで? 2、3年経ったらロックにも慣れたわけ? ならそんな台詞最初に言わなくても良いじゃん。
  • 海のそばで育った人間が、高校生になって水平線が丸いことに驚くなんてありえないと思うんですけど。
  • じいちゃんが朔に通帳渡して暗証番号教えてるけど、それでは金はおろせないのでは。通帳とはんこ(窓口)、もしくはキャッシュカードと暗証番号(ATM)。それとも田舎の郵便局では窓口に通帳出して暗証番号言えば金がおろせるんでしょうか。住民の顔みんな知ってそうだしね。でも逆に大金おろすと不審がられるんじゃない?
  • 第5章は蛇足だと思う。