よむきくたべるあるくみる

現在「そだてる」モードにつき、どれも中途半端。

私が「ヴィジュアル系」だった頃。

私が「ヴィジュアル系」だった頃。

私が「ヴィジュアル系」だった頃。

わはははは、と笑い飛ばしながら読めるかと思ったんですが……単純にそういうわけにはいかなかった。いや、ゲタゲタ笑える部分も多かったのだけども。
あの時代は終わってしまったんだよ。
いろんな証拠を見せられて、理詰めで説得されて、そう諭されたような気分。
一つの時代が既に終わってしまったことは理解していて、自分の中でも過去のものとして消化していて「そんなことあったよねー」って笑って話せるつもりでいたのです。なのに、改めて事実を突きつけられてみたら全然消化できていないことに気付いて、そのことに愕然とした。そんな過去にしがみつくほど熱狂的なファンでもなかったんだけどなあ。でも逆に、当時燃焼し切らなかったから今でも燻っているのかもしれない。
この本に出てくる人たちだって、すっぱりと過去を割り切っているわけではなく、多少引きずってはいるけれど、それでも「あの頃は」とか「あの時代は」と何度も言われると、「終わっちゃった感」が強すぎて気分が沈む。
とはいえ、非常に興味深く面白い本でした。以下長々と感想を。
オーケンの、微妙に客観的な視点がいつもながら面白い。「リンダリンダラバーソール」の時もそうだったけど、熱狂の中にいながら、どこか冷めた目で観察している。非常に的確な意見を出してくる人だなあ、と今回も思わされた。ちなみに私にとって筋少V系(耽美系?)に含まれます。だってオーケン顔にひび割れ描いてたじゃん。橘高さんもばっちりお化粧してたじゃん。しかも歌詞は後ろ向きで自己否定で時々難解。なので自称V系の元祖、認めます。
YOSHIKIは……変わらないなあ。良い意味でも悪い意味でも変わらない。最後に自分で「スタジオという名のタイムカプセルに入ってたんだ」とか言ってますが、まさしくそうなのだと思う。今回この本の中で一番、あの時代を過去にできていない人、はYOSHIKIじゃないかと。海外在住だし表舞台に出ないから現状が把握できないのは当然大きな要因だけど、それ以上に自ら閉じこもって変わらずにいようとしている感じがすごくした。だから私はいまだにYOSHIKIから逃れられないのかも。さっさと引退してクラシックをやりたい、とか言ってるけど、この人はきっと引退できないと思うよ……。万一引退してクラシックを始めたとしても、私はそれを追いかけるのでしょうが。
SUGIZOインタビューでは、LUNA SEAの内実を初めて知った。私の中でLUNA SEAは常に不動で3位くらいの位置にあったから、私はLUNA SEAについては表に出ている面しか知らない。もっと好きだとゴシップやら何やらを信じる信じないに関わらずとりあえず見聞きし、後になって、あれは本当だったのか、とか、やっぱりガセか、とか思うのだけれど、LUNA SEAに関してはゴシップも何もほとんど知らない。Jの本でいくらか触れられてはいるけれど、今回のSUGIZOの話ほど突っ込んだ話ではなかったので、これを読んでものすごく納得が行った。勿論これはSUGIZOの視点からの話だし、他のメンバーはまた別なことを言うのかもしれないけど。でも、全然違う5人が妥協せずにぶつかっていた、というLUNA SEAの根本には間違いなかったので、良かった。
私はPIERROTはまともに聞いたことがないのだけど、キリトは面白いなあと常々思う。こういう人が出なくなったから、最近のバンドには興味が持てないんだろうなあ。しっかしキリトはhideに会ってたのか! それもきっかけは人違い(笑)。そのエピソードがものすごく面白かったです。大島暁美さんのPATAちゃんエピソードも、らしすぎて可笑しかった。
ただひとつ、ものすごく気になったことが。
もしかしてTourbillonのライブについて「ルナシー終幕後、家庭に入った女性がロックを聴きたくて戻ってきたのでは」と言った関係者って市川さんですか(https://deepred.hatenablog.jp/entry/20050704/p2参照)。
なんかやたらと、特にSUGIZOとの対談の中で、「家庭に入ったファン」について言及してるんですけど。一例を挙げるとこんなの。

逆に元リスナーたちもさ、せっかくスレイヴとして青春時代を盛り上がった経験があるんだったら、たとえ今は立派な主婦として家庭に入ってるとしても、「その後のLUNA SEAたち」を聴きに出てきてほしいけどね。

スポーツ新聞の記事よりはマシだけど、やっぱり反発を感じますよ?
確かに、大人になるとファンを止めてしまう人というのは多い。好きだったバンドやアイドルが解散などしていなくても、大人になると興味を失ってしまう。多分優先順位が変わってしまうからだと思うけど。恋愛や仕事や家族の方が音楽よりはるかに大事になるのでしょう。でも一度は好きだったんだから、また戻ってくる可能性もあるし(それを出戻りと言いますね(笑))、戻ってきて欲しいと思うのも道理。
だけどなんでそこで立派な主婦だの家庭に入るだのって言葉が出てくるんだ。それ必要ないじゃん。その一節を抜いてもちゃんと意味の通った文章になるのに。わざわざ入ってるって事は、ファンを辞めた人は結婚して主婦になっているのが大多数だ、と考えているんだろうなあ。しかも「家庭に入っているとしても出てきて欲しい」なんて、本当は主婦は遊びに行くべきじゃないけど、って意見が透けて見えます。その辺りに一家言あるというのなら別だけど、あまり考えずに書いちゃったのなら削除して欲しい。ってここに書いても仕方ないのだが。直訴するか……(え)。
ところであとがきによれば、当初の予定ではこんな本になるはずだったらしい。

V系と呼ばれた時代>を日本のロック史的に位置づけようと、それこそ関係者たちの証言を根こそぎ集めて検証する予定だったのだ。他にも、セールス的な見地からの解析や『酒呑み日記』再録、音専誌の表紙の変遷に見るV系の栄枯盛衰、といった企画を雪崩のように詰め込むつもりだったのである。

しかし、インタビューが予想外に盛り上がった上、それだけで充分あの時代を語れていたため、ほぼ完全収録のインタビュー本に変えた、とのこと。
もし予定通りの本だったら、もっと単純に楽しめた気がする。数年前に別冊宝島で出た「X JAPANヴィジュアル系黄金伝説」はまさにそんな感じ。それを市川さん総編集でやると更に面白そうだし。でもどっちが良いかって言ったら、このインタビュー本だな。自分が困ったちゃん(笑)であることが判明してしまったけれど、読み物として非常に面白かった。それにしても酒呑み日記!! 是非出してもらいたい!
ちなみに、本文を読んでいる間、注釈を見る必要がほとんどありませんでした。だって全部リアルタイムで知ってるもの。注釈は注釈であとでまとめて読んで楽しんだけど。キリトはリアルタイムでは知らないけど、「偽装音楽業界」を読んでいたのでスラスラと。やっぱり私はヴィジュオタか……。